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経営者の方と話していて、最近よく出てくる話があります。
「人を採るコストが上がりすぎて、業績が圧迫されている」「粗利率が落ちている」「決定率も以前みたいに伸びない」——どこも同じような悩みを抱えていらっしゃるんですよ。
僕も人材紹介の世界に長くいる人間として、この感覚はよくわかります。送信数を増やしても返ってこない。スカウト人員を増やすほど、組織が回らなくなる。AIだ、ジョブ型だ、2030年問題だ、と話題は飛び交っているけれど、自社が明日からどうするかは、誰も教えてくれないじゃないですか。
今日はこの「紹介業の粗利が消えていく」問題について、ちょっと違う角度から書いてみたいと思います。
率直に言うと、粗利が消えている本当の理由は、業界の構造そのものが歪んでしまっているからなんですよ。
僕が一番違和感を感じたのは、エン・ジャパンから独立して採用コンサルをやっていた時期です。ある求人企業の採用支援に入っていた時、そこに営業に来た人材紹介会社から、こう言われたんです。「フィーを50%にしてくれたら、御社に優先的にいい人を紹介しますよ」と。
正直、耳を疑いました。求職者ファーストとか、企業文化のマッチングとか、業界が外向きに言っていることと、実際の取引の中身がまったく違う。人材紹介が、ほぼオークションみたいになっている。これが業界の現場でした。
この構造が、粗利が削れていく根っこにあると、今でも僕は思っています。
成果報酬の比率がどんどん上がる。エージェントの取り分は増えても、競合が増えすぎて結局取り合いになる。フィーで殴る側もきついし、フィーを下げる側もきつい。みんなで売上を取り合って、みんなで粗利を削っている。これが20代の頃、目の前で起きていた業界の姿なんですよ。
ここに、構造的な追い打ちが来ています。
スカウトの送信数を増やすには、人を増やさないといけない。でも採用市場では、人材紹介業の中の人も取り合いになっていて、優秀なRA・CAの採用単価は上がる一方です。人手不足の業界が、人手不足のせいで成長を止めるという、笑えない構造じゃないですか。
しかも、労務管理は厳しくなっている。夜中に追いかけて、誰かが燃えて帳尻を合わせる、というやり方は、もう成立しません。組織として「健康に回る運用」じゃないと、人は持ちません。法令的にも問題になる。そういう時代です。
つまり、人海戦術で殴る経営モデルは、終わっています。送信数を増やすほどコストが膨らみ、現場は疲弊し、エースから辞めていく。気がつくと、新人ばかりの組織で、決定率がさらに落ちる。この悪循環の出口は、人を増やすことの中にはありません。
ここで、AIとジョブ型の話に触れさせてください。
世間ではよく「AIが仕事を奪う」「ジョブ型で業界が崩壊する」みたいに語られています。でも、僕の感覚はもう少し違うんですよ。
AIは、人がやらなくていい仕事を引き受けてくれる側です。スカウトの一次送信、日程調整、候補者のプロフィール整理、AIに任せていい作業がいくつもある。これを人がやり続けるから、現場が疲弊するんです。事務作業をAIに渡して、人は人にしかできない仕事に時間を戻す。これが、AIの本当の意味じゃないですか。
ジョブ型雇用も同じです。世間では「これから進む」と言われていますが、現場感覚ではもう普通に進んでいるんですよ。歌ってるだけで結局そうなっちゃっている、というか。求職者の側も「自分はこの仕事ができる、これはできない」とジョブで考えるようになっている。これは紹介業にとって、要件をふわっと書いて誤魔化す時代の終わりです。
裏を返せば、要件を解像度高く言語化し、企業と密にコミュニケーションを取って、候補者に翻訳する。これが本気でできる人材紹介会社は、ジョブ型時代にむしろ強くなります。AIもジョブ型も、業界の構造を「整える側」に効くんです。
ただ、ここで一つだけ強調しておきたいことがあります。
人が動く意味は、変わりません。
AI面接という流れもありますが、受けた候補者の感想は「緊張した」「印象が悪い」とネガティブな声が多いんですよ。本当に人を大事にしている会社ほど、AI面接なんてやらない。ちゃんと人が会って、人を見ている。
スカウトも紹介も同じです。AIで量を出せるからこそ、最後に決まる現場では「人が見た」というメッセージが効く。書類だけでは見えない候補者の魅力を、人が間に立って翻訳する。これは、AIには代替できない仕事なんですよ。
そして、これは「現場のコンサルタント」だけの話じゃありません。経営者として、自社のコンサルタントの時間をどこに使わせるか——ここが、これからの経営判断の核になります。送信や調整に時間を溶かさせ続ければ、決定率は戻りません。事務を切り離して、人が見るべき場所に戻す。それを設計するのが経営の仕事です。
僕は、独立する時に強く思ったことがあります。エン・ジャパンの看板に守られているうちは、それなりにやれるかもしれない。でも、看板を外したときに「鈴木だから頼む」と言われる存在になれるかどうか。経営者になりたかったわけじゃありません。ただ、自分の力で戦ってみたかった。それだけです。
これは、人材紹介会社の経営にも通じる話なんです。
媒体や送信数で殴る競争では、どこも代わりが効きます。明日同業他社に乗り換えられても文句は言えない。でも、「あなたの会社だから頼む」と言われる関係が築けていれば、業界の構造変化が来ても、揺らがない。
そのためには、自社の強みがどこにあるかを、もう一度見直すしかありません。要件を翻訳する力か、特定業界での深さか、候補者との信頼関係か。全部やる必要はない、自社が勝てる部分を見つけて、そこに時間とリソースを集中させる。
完璧な会社なんてないんです。でも、どこにでも勝てる部分が何かしらある。それを見つけて伸ばす設計に切り替えられるかどうかで、これからの数年が決まります。
会社は生き物だと、僕はいつも思ってます。
組織は、時間が経てば必ず劣化する。最初の頃の熱量や柔軟さは、放っておけば失われる。でも逆に言えば、生き物だからこそ、設計を変えられるんですよ。死んだ機械じゃない。
経営者にできるのは、「今の延長線で頑張る」ことじゃない。設計をどこで変えるかを決めることです。送信数で殴り続けるのか、人が見る時間を取り戻す方向に舵を切るのか。その判断だけで、3年後の景色は変わります。
それぞれの判断は、すぐには成果が出ません。でも、3年後の粗利率がどうなっているかは、今日の判断が決めます。
紹介業の粗利が消えていくのは、業界全体で起きている問題です。CPAは上がり続け、人材は取り合いになり、AIとジョブ型が運用の前提を変えていく。この流れは、もう戻りません。
だから、残る選択肢は2つです。
このまま、送信数と人海戦術で粗利を守ろうとし続けるのか。 それとも、自社の勝てる部分を見つけて、人が見る時間を取り戻す設計に切り替えるのか。
僕らSales Agentは、営業職特化のプラットフォームです。普通の人材紹介会社が一社で抱える「求人開拓(RA)」の部分を僕らが担い、登録してくれた人材紹介会社さんは「求職者を担当する側(CA)」に専念できる仕組み。未来への適応コストを最小化するための基盤になることを目指しています。
小さく導入して、決定率や粗利率という成果で評価する。それが、現実的に経営判断を前に進める道筋です。
変化は避けられません。だったら、先に動いた経営者が勝ちます。
紹介業の構造的な変化に対応するための具体策を、資料でまとめました。経営者の方向けの情報交換の機会も設けています。詳しくは[こちら]から。
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